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54 フォーレ | チェロとピアノのための作品(全曲) フォーレの初期のチェロ作品である《エレジー》と《子守唄》が書かれたのは、彼がブルジ ョワたちや知識人たちが集うサロンに足繁く通っていた19世紀後半です。ジャック・ボノ ールは、この2曲について、いささか挑発的な文章を書いています。「これらの作品だけが 知られていたら、世間はフォーレが甘ったるい菓子ばかり作っていたと思うだろう」と。こ れに賛同なさいますか? グザヴィエ・フィリップス : 当時のフォーレは、声楽のためのロマンスも沢山書いていまし た。彼は、進んでロマンチックな作曲家として身を立て、名を挙げたのです。《子守唄》でそう したように、意図して流行りの“甘ったるい”曲想を取り入れながら……。確かに私たちは、も しも他の作品を知らなければ、彼の音楽がもっぱらそのような世界に属していると考えるで しょう。しかし、フォーレは職人です。彼は若き日に、周囲の期待に応えて曲を書き、生活の 糧を得ました。だからこそ後年に、よりいっそう自由に、真に自分らしく、表現することができ たのです。 そうは言っても、彼のサロン音楽は誠実で、洗練を極めています——《エレジ ー》には心動かされずにはいられませんし、どこまでも繊細で優しい《子守唄》 を聞くと、決まって心がやわらぎます。

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