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53 グザヴィエ・フィリップス | セドリック・ティベルギアン ジャンケレヴィッチは、こうも書いています。「フォーレの作品は、絶えざる出発であり、際 限のない帰還である」と。これについては、どう思われますか? グザヴィエ・フィリップス : とても美しい表現ですし、的を射ていると思います。フォーレの 音楽は水のようで、終わりのないループ(環)の中にあります。その水は小川となって大河に 注ぎ、その大河は海に注ぎ、海から雨雲が作られ、雨水が再び小川になリます……。水の流 れは時に激しく、時に穏やかです。フォーレの音楽は驚くべきヴァイタリティをそなえており、 根付き木のように展開されます。そのもっとも顕著な例は、《チェロ・ソナタ第1番》の終楽章 だと思います。ここでフォーレは、極めて遅いテンポを指定しています。私たち二人は、試しに 彼のメトロノーム表記にできるだけ近いテンポで演奏してみました。音楽が前進して流れ続 ける瀬戸際まで、次第にテンポを落としてみたのです。まるで自分たちの心拍を下げていくか のように……。それによって私たちは、彼の音楽の展開を把握することができました——そ れは慎重に、緩やかに進み、突如として燃え上がり、押し寄せる情熱とともに幕を閉じます。 セドリック・ティベルギアン : そのヴァイタリティは、彼が70歳を超えてから手がけた二つの チェロ・ソナタの中で倍増しています! 2作とも穏やかに始まりますが、次第にテンポが速 まり、突然、白熱します。この炎は、すでに彼の以前の作品——たとえば《ヴァイオリン・ソナ タ第1番》や《ピアノ四重奏曲第1番》——の中でパチパチと音を立てていました。私たちが 写真を通して知っている髭をたくわえた老齢の紳士と、彼の内面は、全く違います。彼の外見 と、内に秘められているものは異なるのです。
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