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50 フォーレ | チェロとピアノのための作品(全曲) セドリック・ティベルギアン : 確かに、ピアニストとしてフォーレの作品に取り組む中で、より いっそう“ひっかかり”を感じました! しばしば私は、こう自問しました。なぜフォーレはこの ように書いたのだろう? 彼は何を言わんとしているのだろう? ……結局、答えを手にす ることはできませんでした。フォーレの音楽を“分解”しようとすればするほど、その奇跡的な“ 平衡”が逃げて行ってしまうのです! これは、量子物理学の原理にたとえられます。何かを 観察しているとき、観察しているという事実それ自体が、その有様を変化させてしまうからで す。フォーレの音楽では、全てが多義的です。というのも、旋律と和声を明確に区別したり、 分離したりすることができないのです——そうしようとした瞬間、音楽は私に抗います。裏を 返せば、後ろに下がれば下がるほど、全体像を眺められるようになります。彼の音楽は、立ち 入り過ぎないようにすれば、自然に流れていきます。 フォーレの場合、彼の作品に本来的にそなわっている美を信頼し、手放してみ る勇気が求められます。それはグザヴィエにとっては、もともと自明でしたが、 私には、それを認識するプロセスが必要でした。私は、“理解せず、ただ感嘆す ればいいのだ”と、悟らなければならなかったのです。
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