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49 グザヴィエ・フィリップス | セドリック・ティベルギアン お二人では、録音前にどのような準備をなさったのですか? セドリック・ティベルギアン : ひたすら二人で一緒に弾きました。通常のリハーサルとは違う アプローチです。もちろん、入り組んだ対位法的なパッセージは、入念に確認して仕上げる 必要がありましたが、基本的には音楽の流れや適切なテンポを感じるために何度も一緒に 演奏しました。流れやテンポは、徐々におのずと確立されていきましたし、その後に変化する こともありました。 お一人での準備はいかがでしたか? グザヴィエ・フィリップス : たいていの場合、私は音楽に直感的にアプローチします。かつ てムスティスラフ・ロストロポーヴィチから、楽節や楽曲構造を重視することを学びましたの で、もちろんそれらの要素に関心を向けてはきましたが、あまりに微に入り細を穿(うが)つよ うなアプローチは避けています。フォーレの音楽にも、その方向性で取り組んでいます。彼の 一癖も二癖もある和声について考え過ぎず、彼の音楽を“解剖”して分析することもせず、上 空から景色を眺めるように、彼の作品と向き合っています。フォーレの音楽は、もっとも複雑 な和声が繰り広げられる箇所でさえ、実に官能的です。厳密な構造や数学的な設計は彼の 音楽の特性ではありません。作曲家たちの中には、よりそのような傾向をもつ人もおり、その 場合は、作品の理解に“解体”や分析が欠かせません。しかしフォーレの音楽は、奏者に“理 解”を求めません。私はチェリストとしての立場上、旋律に最大の注意を向けていますが、ピ アニストにとって、この問題がより複雑であることは言うまでもありません。
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