LDV101
42 ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲第12番は4楽章から成る。第1楽章〈アレグロ・ノン・トロッポ〉の冒頭の主題 は、スメタナが20年前に書いた弦楽四重奏曲《わが生涯より》との類似を聞かせる。この楽 章は、野外の春の息吹を想起させるとともに、シンコペーションのアルペッジョで始まる主 題によって、ドヴォルザークに感銘を与えたプランテーション(大農園)の歌の情緒をも喚起 する。2つの主要主題を支える五音音階(ピアノの黒鍵に当たる)は、多くのボへミア民謡と アフリカ系アメリカ人の歌謡に共通して用いられている。ドヴォルザークはここで、とりわけ 低音の響きを重視している。[ヴィオラ奏者であった]彼自身の“声”を象徴するヴィオラ・パー トが、有名な第1主題を提示するいっぽうで、再現部ではチェロの高音域が際立たせられて いる。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx