LDV101
40 ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲第12番は、1894年1月1日にボストンにて、クナイゼル四重奏団により初演 された。大成功を収めた彼らは、この曲を同年に50回以上も再演することになった。以来、 つねに高い人気と評価を得てきたこの作品は、1925年のボヘミアン四重奏団による初の アコースティック録音と、翌年のブダペスト四重奏団による初の電気録音を皮切りに、おび ただしい数のレコーディングを生み出してきた。ドヴォルザークは1893年6月にごく短期間 で第12番を完成させた数日後に、もう一つの傑作、弦楽五重奏曲作品97《インディアン》 の作曲に着手している。幸せで満ち足りた彼は、朝5時に起床し、ターキー川の岸を散歩し ながら鳥のさえずりを聞き、7時の礼拝でオルガンを弾き、近所に住むチェコ移民たちと会 話をして故郷ボヘミアに思いをはせた。ちょうど同年に書かれたドビュッシーの弦楽四重 奏曲は東方に目を向け、全音音階を用いており、ドヴォルザークの《アメリカ》は西方に目を 向け、種々の五音音階を用いている。この偶然の一致は、遠く離れた地にいた二人の作曲 家が、弦楽四重奏をエキゾチズム(異国趣味)の道に引き入れながら、このジャンルの表現 手段を個々のやり方で刷新しようしたことを示している。
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