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ベアトリス·べリュ 41 燃えるような、しかしよそよそしい空は、彼にアルマのことを思い出させた。じっさい彼は、取 るに足りないような事柄によって創作を邪魔されるのを避けていた。なぜなら、作曲に割け る時間はかなり限られているからだ。彼はアルマのことを随分とないがしろにした。彼女の態 度が、それを物語っていた。いっぽうで彼は、アルマを熱烈に愛していた。彼は初対面の翌日 に彼女に求婚した!僕が幸せだと知れば、彼女も幸せを感じるはずだ――彼はそう自分に 言い聞かせ、良心をなだめた。先ほどスケッチを終えた〈アダージェット〉は、二人の愛と彼女 の献身を称える讃歌だ――安堵した彼は、身体の緊張がやわらいでいくのを感じた。彼は身 震いし、シャツの擦り切れた裾に手をこすりつけた。このインクはどうも落ちにくい……。 木々から落ちてきた小枝を足ではらった彼は、しばしのあいだ、生命が震わす世界をじっと 見つめた。彼の頭上にある枝から鳥たちが飛び去ると、冷たい水滴が落ちてきた。驚いた彼 は、袖で額をぬぐった。小屋に引き返すことにしよう……。日没とともに、小屋の扉が再び閉 まった。彼はまた作曲しはじめた。額に緊張が走り、苦悶が身体を襲った。

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