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40 マーラー ∙ シェーンベルク / ユーゲント·シュティール 彼は本を置き、小屋の扉を押した。水を吸って柔らかくなった地面が、彼の足元で歌声を上 げた。ひんやりとした空気に身震いした彼は、両腕をさすり上着の前を閉じて、小道を進んで いった。雲行きがあやしい。日差しが消えかかっている。いまわの声を上げる太陽が赤く染め た雲は、苦痛に身をよじっているように見える。長いあいだ筆を握っていた指が少し痛んだ。 そして彼は、作品の冒頭に葬送行進曲を置くというアイデアに心を踊らせた。古い世界を葬 り、新しい世界を築く。そこに言葉はなく、すべてが純粋に音楽的な言語で語られる。この交 響曲では、声楽にも、明白なシノプシスにも、居場所はない。つまりそれは、音楽でしかないの だ。彼は力なく、この沈黙に支配された巨大な森の入り口に立っている。だが創作が、彼に力 を授けてくれる。 アルマの存在もまた、彼を力づける。彼女は彼を愛しており、彼のために献身的に作曲の筆 を折った。彼はアルマと出会ったときのことを思い出し、嬉しくなった。二人は、ウィーンでも 特に評判なサロンの主催者、ベルタ·ツッカーカンドルの家で知り合った。彼は、アルマを一 目見て、ただのとびきり美人な娘だと思った。だがすぐに、彼女の利発さと知性に心を奪わ れた。この夜会ではちょっとした事件も起きた。二人の叫び声を耳にして、招待客全員が静 まり返った。彼女はわめき、彼は足を踏み鳴らした。彼らはツェムリンスキーに関して言い争 っていたのだ。ツェムリンスキーか――彼はそうつぶやいて、再び漠然と考えをめぐらせた。

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