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ベアトリス·べリュ 39 ふと空を見上げると、晴れわたっている。葬送行進曲とともに幕開けする交響曲。今日の天 気は、この構想に似つかわしい。ただし、晴れ間は長くはつづかないだろう。夜明けから作 曲に精を出していた彼は疲れ果てていた。身体の節々が痛む。伸びをしてから立ち上がり、 部屋の中を少し歩いた。なんという静寂。この一年に経験した宮廷歌劇場の音楽家たちと の数々の衝突と、鮮やかな対照をなしている。“私はこの世に忘れられ”と詠んだのはリュッ ケルトだった――彼は窓辺に無造作に置かれていた本を手に取り、頁をめくって苦笑した。 まさに僕のことじゃないか。そう考えてから、ため息をこぼした。 今日、夜雨に包まれながら未来が芽生える――彼はそう予感した。リュッケルトは、二人の 末子を相次いで亡くした後に『亡き子をしのぶ歌』を書いた。そして彼は、この詩に音楽を つけた歌曲を、葬送行進曲の中に忍ばせた……。のちに彼とアルマの娘は、猩紅熱に苦し み命を落とすことになる。彼はまだそれを知らない。しかし音楽は、すでにそれを知ってい る。この時点で生まれていなかったマリア·アンナの命は、やがて火花のごとくはかなく消え てしまうのだ。空から降り注ぐ束の間の光が、この不幸を予示していた。

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