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43 ミシェル・ダルベルト そのような見解は、リピートの扱いにも当てはまるのでしょうか? もちろんです。シューベルトの場合、リピートそのものが作品の基礎的な素材であり、彼の 音楽的な思想と堅く結びついています。なぜなら彼は、絶えず過去を振り返っているから です。《冬の旅》がその好例です。そこには、いわばパラドックスが潜んでいます。シューベ ルトは自分自身に関心を寄せ、自分が苦しんだ過去を追い求めています。にもかかわらず 彼の音楽は、私たち受け手の一人一人に語りかけてきます。他方、ベートーヴェンは自分 を越えたより大きなものについて絶えず考えをめぐらせており、過去を振り返ることは稀で す。たとえば、《「悲愴」ソナタ》の第1楽章は完全に未来へと開かれているような印象を与え ますが、終楽章〈ロンド〉は決然と過去に目を向けています——極めてハイドン的な、多様な 展開の手法が詰まった“小休止”として。ただしそれは、ベートーヴェンらしさが混ざったハ イドンです。ベートーヴェンの音楽において全てのリピートを行わないことは、誤りにはなり ません。なぜなら結局のところ、彼のねらいはかなりシンプルだからです。ベートーヴェンは 普遍的な言葉で、人類全体に語りかけているのです。

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