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41 ミシェル・ダルベルト 演奏におけるオーセンティシティの問題を、どのように考えていますか?演奏 に用いる楽器の選択についてもお話しください。 ベートーヴェンの想像世界は、私たちの目に限りなく巨大に映ります。それでも私は、彼が 未来の音楽を先取りしていたとは思いません。ベートーヴェンは何よりもまず、先人たちの 音楽的遺産を理解し、自分のものにしたのです。そう考えると、ベートーヴェンの作品を弾 く演奏家が置かれている状況は複雑です。なぜなら、私たちは“未来”で起こったことは一 旦“忘れ”、その作品と向き合わなければならないからです。それこそが、真の意味でのオ ーセンティシティの追求です。たとえば私は、若い頃のベートーヴェンが書いたピアノ・ソナ タが後期作品のように演奏されているのを聴くと、時折り困惑してしまいます。 どんな楽器を選ぶかは、さして重要ではありません。ベートーヴェンのようなタイプの作曲 家たちは、単に好奇心が旺盛であったがために、常に楽器の進化に目を光らせ、最新の 性能を作品に取り入れたがったのです。したがって、作曲当時とは違う楽器で演奏するこ と自体は、これまで何ら問題ではありませんでしたし、私に言わせれば、今日もなお支障は ありません。むしろ刺激を与えられます!たとえば、ピアノフォルテがなおざりにされている 現在、ピアノは倍音に乏しいですが、その損失をモダン楽器ならではの長所、たとえばソス テヌートペダルの使用によって埋め合わせることができます。私自身、フランクの作品を演 奏する際に、このペダルをよく使っています。彼やドビュッシーの書法は、パイプ・オルガン のレジストレーションを連想させます。私は、ベートーヴェンやシューマンやリストの作品で も、ソステヌートペダルをますます頻繁に使うようになっていますし、それにともなって演奏 テクニックの再考を促されています。

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