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ミシェル・ダルベルト 37 さらに演奏家は、“先輩”たちの演奏を定期的に聴くことで、自身の個性を形成していき ます。私の場合は、マウリツィオ・ポリーニの初期のリサイタルに足を運んでいますし、ア ルフレッド・ブレンデルやクラウディオ・アラウ、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの 実演にも接しました。ダニエル・バレンボイムが、イギリス室内管弦楽団との共演でモーツ ァルトの協奏曲を弾き振りした公演も生で聴きました。思えば、彼らはみな、コルトーに敬 服していました。フランソワ・アンセルミニとレミ・ジャコブは、名著『アルフレッド・コルトー』 (Editions Fayard, 2018)の中で、コルトーが1920年代にソ連を訪れたことに言及していま す。コルトーがモスクワ音楽院で開いたリサイタルは、現地で激しい賛否両論を巻き起こし ました。コルトーの熱狂的な支持者の一人であったゲンリフ・ネイガウスが育てたのが、スヴ ャトスラフ・リヒテルとエミール・ギレリスです。二人は全くタイプが違いますが、いずれもベー トーヴェン演奏の大家でした。

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