LDV78.9
36 ベートーヴェン あなたが指導を受けたヴラド・ペルルミュテールとジャン・ユボーは、何よりも フランス作品の名手として定評があります。彼らがベートーヴェンを定期的に 弾いていたことは、あまり知られていません。あなたは、この二人の巨匠が担っ た伝統から影響を受けているのでしょうか? ペルルミュテール先生は生徒たちの前で、ヴィルヘルム・バックハウスが弾くベートーヴェ ンを絶賛していました。ペルルミュテール先生は、その師アルフレッド・コルトー(ルイ・ディ エメの弟子です)から、ある種のドイツ的な伝統を受け継いだと言えると思います。私自身、 この伝統に愛着を抱いています。なぜならそれは、私の思考様式や、私が好む演奏スタイ ルに合致しているからです。ペルルミュテール先生は、明瞭な演奏に非常なこだわりを持 っていました。彼は、ポリフォニーや音色を重視する一方で、気取った演奏や、わざとらし い強弱や意図を毛嫌いしていました。私はレイモン・トルアール先生のもとでも学びました が、特に演奏技術の面で多くを負っているのは、ペルルミュテール先生の助手だったマル セル・ウークラン先生です。彼らは、唯一、私が薫陶を得た音楽家たちです。しかも私は、 他の大ピアニストたちのもとで学びたいと望んだことは一度もありません。私には、さまざま な巨匠のもとを蝶々のように渡り歩くよりも、同一の“楽派”内に留まって学び続けるほうが、 いっそう有益に思えます。時折り、次々に先生を変える若いピアニストたちを見かけます が……。
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