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ミシェル・ダルベルト 35 あなたはすでに、ベートーヴェンのソナタや室内楽曲を幾度か録音していま す。そもそもどのように彼の音楽世界に足を踏み入れたのでしょうか? パリ国立高等音楽院に在学中に、《創作主題による32の変奏曲》《ソナタ第4番op.7》《ソナ タ第26番op.81a「告別」》《ソナタ第32番op.111》を学びました。op.7は、クララ・ハスキル国 際コンクールとリーズ国際コンクールで演奏した作品でもあります。1980年にヴェネツィア のフェニーチェ劇場がベートーヴェンの全32曲のソナタ・ツィクルスをプログラミングした際 には、私が2度のリサイタルで第1番から第8番までの8曲を弾きました。そしてエラート・レ ーベルから、第1番~第7番の録音の依頼をいただいたのです。ピアニストたちのあいだで は、後期のソナタに比べて人気の低いソナタです……。おそらくはシューベルトの音楽の 探求が、長年、私をベートーヴェンの音楽からやや遠ざけていました。今から10年ほど前 に、ようやく《熱情》や《月光》に取り組む決心をし、再びop.111がレパートリーに加わりまし た。今回の2枚組のアルバムは、さまざまな時期に書かれたソナタを通して、ベートーヴェン の書法の見事な進展を示す試みです。 ベートーヴェンの晩年のソナタの幾つかについては、若い頃に演奏し始め、時 とともに熟させていく必要があると言われていますが…… ルドルフ・ゼルキンは、もしも《「ハンマークラヴィーア」ソナタ》を20歳以前に学び始め ていなければ、後に人前で演奏するのは避けたほうがよいと主張していました!私 はパリ音楽院に在学中に、《熱情》をピアノで演奏する代わりに、授業で分析しまし た。それから30年後、このソナタに再び向き合ったとき、自分が楽譜に書き込んだ沢 山のメモを見つけ、“あの分析の経験は時間の無駄ではなかった”と実感しました。
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