LDV201

26 ヨハン・セバスティアン・バッハ トッカータとフーガ ニ短調 BWV538「ドリア調」 自筆譜は失われているが、残された筆写譜によって、各所で使用すべき手鍵盤 が明記されているバッハ唯一の作品である。その目的は、それぞれの和音のグ ループや、模倣による動機の応酬を対比させることにあった――協奏曲におい て、コンチェルティーノ(小グループ)がリピエーノ(大グループ)に対置されるよう に。現在、この貴重な演奏指示は、バッハの数々の作品を演奏する際の基礎的 な資料の一つとされている。 「トッカータ」は、交響楽のトッカータのモデルであったと言うことが出来る。明るさ と気まぐれ、荒々しいコントラストに満ちているのだ。トッカータ全体は力強く一息 に、一様で切れ目のないリズミカルな動きによって進んでいく。威厳のある「フー ガ」は、驚きと感嘆を招く――限られた素材が活用され、構造は厳密で、目覚ま しい力が濃縮されている。 その重々しく内省的な主題はすぐさま、いくらか神秘的な瞑想へと私たちをいざ なう。バッハが好んだ多くの象徴的な表現が、暗号化された言語を介して指し示 す世界へと。その7小節にわたる主題は 3 角形を描き、音階の全 7 音を含んでいる のだ。7は言うまでもなく、神を象徴する 3 と人間を象徴する 4 を合わせた、完全な る数字である!

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