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31 エルメス四重奏団 シューマンの音楽においては、ピアノと人間の声が重要な位置を占めていますが、彼の弦 楽作品の書法にまで、その影響はみられるのでしょうか。 非常にレガートな拍子をとりながら、メロディ・ラインを奏でるパートが他の 3 つのパートにシ ンコペーションで伴奏される場合、技術的な難易度の高いピアノ作品を連想させます(作 品 41 - 2 の第 3 「スケルツォ」楽章や、作品 41 - 3 の第 3 「アダージョ・モルト」楽章など)。時々、 不意に出てくる和音の垂直な構造も、容易に指摘できるピアノ的書法ですね。一方、声楽 的な美学は特に作品 41 - 2 と 41 - 3 で感じさせられます。多くのシンコペーションによって、拍 通りの音がほぼ皆無となる箇所がそうです。また、作品 41 - 3 の冒頭で第1ヴァイオリンが奏 でる最初の音程(嬰ヘ – ロ)はすでに、声楽を思い起こさせます。さらに、弦楽器に典型的 なニュアンス記号であるスフォルツァンドでは、器楽奏者は人間の声にならって音の中に生 気を吹き込むことになります。その場合には音符の中、つまり音の内部で表現することを求 められます。

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