LDV17

28 シューマン: 3 つの弦楽四重奏曲 作品 41 シューマンは 1842 年の夏、 6 月 4 日から 7 月 22 日にかけて、この 3 作の弦楽四重奏曲を作曲 しました。これは、ようやくクララ・ヴィークとの結婚が実現してから約 2 年後のことです。 ヴィルトゥオーゾ・ピアニストの妻クララの陰で、シューマンはリストの助言に従って弦楽 四重奏曲の作曲に着手します。この 3 曲を高く評価されたシューマンは、クララや敬愛す る友人メンデルスゾーンにその才能を認められるに至りました。ところで、作品 41 には曲 集としての一貫性がみられますが、 3 曲にはそれぞれ、他と異なる特徴も散見されます。こ うした相違を、どのように捉えていらっしゃいますか? 3 つの異なる雰囲気・次元として受けとめています。作品 41 - 1 には、より哲学的なものを感じ ます。それはシューマンが古典派の先達たちから受けた多大な影響によるものでしょう。後 の 2 曲に比べて不安定なリズムも少ないですね。作品 41 - 2 には、充実とみずみずしさがあ り、私達自身、これをとても気に入っています。残念ながら他の 2 曲と比べて演奏される機 会が少ないのですが。この作品 41 - 2 の各楽章は、どこまでも穏やかな情景を描いた絵画の ようで、母親あるいは庇護者のごとき性格がまず示されます(第 1 「アレグロ・ヴィヴァーチェ」 楽章のテーマ、第 2 「アンダンテ」楽章)。第 4 「フィナーレ」楽章では、ユーモア、そして軽や かでヴィルトゥオジックな歓喜が放たれるものの、悲劇と不安定さが常に隣り合わせである 感覚に伴われています(第 3 「スケルツォ」楽章)。そして作品 41 - 3 において、シューマンは 独自の音楽的感性を表現することで、自己を解放しています。先の 2 曲よりも円熟味が増し ており、その表現はいっそう鋭敏でありながら、いっそう大胆です。今回の録音では、このよ うな 3 つの異なる絵画としての弦楽四重奏曲から、 3 つの異なる響きを引き出そうと努めてい ます。

RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx