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ディスクの誕生秘話についてお話しいただいたところで、各曲について詳細を伺っていき たいと思います。まずはリストの《幻想曲》。ワーグナーの初期のオペラ《リエンツィ》に基 づく作品ですね 。 W.L. : この曲がヴィルトゥオーゾ作品とはみなされていない点が気に入りました――とはい え超絶技巧的なパッセージが明らかに随所に見られるのですが。とまれ《「リエンツィ」の主 題による幻想曲》は、リストの多くの他の編曲作品とは、かなり性格を異にしていると思いま す。この曲の壮大さに惹かれました。 続く《幻想曲 嬰ヘ短調》はワーグナーが若い頃に書いた知られざる作品ですが、この曲 の難しさはどこにあるのでしょうか? W.L. : 実に驚くべき作品です――そこではワーグナーが後に発展させていく書法の萌芽 が、若干のぎこちない表現と共存しています。モーツァルトを思い起こさせる中間部「アダ ージョ・モルト・エ・カンタービレ」がその例です。《幻想曲》は難しい作品です。かなり枝葉 がそぎ落とされた“文体”で書かれていますし、デュナーミクも殆ど明記されていません。演 奏者が作品を「超越して」、そこに意味を付与しようとせねばならない曲です。最初の譜読 みの段階で、多くの興味深い要素を含む作品だと感じました。しかしその後、フレージング を決め――これに関しても殆ど指示が記されていません――、音色を練って曲を熟させる までに、長い時間がかかりました。このイメージに富んだ作品は、今回のプログラム全体の 中で十分な意味を成し、他の収録曲との関わりにおいて存在意義を確立していると思いま す。 33 ウィレム・ラチュウミア
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