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今回のプロジェクトはもともと、演奏会を想定したものだったと仰いましたが、公演で何 度か集中的に作品と向き合った経験は、録音に生かされているのでしょうか? W.L. : 実は、パラッツェット・ブルー・ザーネでのリサイタルの前に、南フランスで6日連続 の演奏会を経験し、ワーグナー・プログラムの「様子を見る」ことが出来ました。当初は各回 で休憩を挟もうと考えていたのですが、初日が終わってすぐに、休憩は省くことに決め、最 初から最後まで続けて弾くことにしました。また、当初のプログラムにはルイ・ブラッサン編 曲による《ワルキューレの騎行》を含めていたのですが、この曲はコンサートには「向いてい る」ものの、今回の録音には適さないのではないかと考えるようになりました。コンサートで の経験からは、音楽的な時間や種々の音色をいかに扱うべきか、という点について多くを 教えられます――そうして学んだことは、スタジオで独りで演奏した際にとても貴重な支え になりました。2012年10月にパラッツェット・ブルー・ザーネでリサイタルを行った際に、ある 方からワーグナーの《エレジー 変イ長調》を薦められ、最終的に今回のCDにこの曲を収め ることにしました。 今回のディスクには作曲家ジェラール・ペソンの名も登場し、貴方の現代音楽に対する 情熱に触れることができます・・・ W.L. : 彼の作品はよく演奏しています。ペソンとはジョン・ケージ作品を取り上げるプロジェ クトの折に極めて密な共同作業をする機会に恵まれました。そうして彼の世界に足を踏み 入れたのです。今回のワーグナー・プロジェクトについて考えを巡らせていた時に、ペソン が《マストの上で》という作品を書いていたことを知りました。プログラムにはまだ《トリスタンと イゾルデ》の第1幕にインスパイアされた曲が無かったことに気が付きまして、この作品も録 音することにしたのです。 32 エクスターズ・マクシマ
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