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フィリップ・カサール : 今回収録した 3 つの連弾作品について、君としてはそれぞれどのよ うに解釈している? セドリック・ペシャ : まず「ロンド」ですが、イ長調は僕にとって、モーツァルトの晩年のクラリネッ ト作品(協奏曲と五重奏曲)はもとより、シューベルトののちの傑作を連想させる調性です。 「ロンド」は、今回の 3 つの連弾作品のうち、最も僕の心を打つものです。主要主題はシュー ベルトが描いた最も完璧な旋律のひとつと言えますし、最後まで、切ないメランコリーに貫 かれています(この結びの部分は「幻想曲 ヘ短調」の曲尾を連想させますが、調性は悲劇 よりもむしろ諦念を表しています)。最後の数小節に至り主題に別れを告げるシューベルト は、もはや終わりを迎えられません・・・。 「人生の嵐」: 夢想と情熱にとらわれ、息もできない程に激しく動揺したシューベルト――。 ベートーヴェンを彷彿とさせる表現や、ブルックナーの予示(第2主題!)が印象的です。 「幻想曲」: シューベルト特有の性格の数々が目まぐるしく現れる、驚くべき構造です―― 種々の光と様々な調性を経る第1主題のメランコリー(そこでは長調と短調、どちらの調性 が最も悲痛であるのか、もはや断言できません)、ラルゴ楽章の断固たる、かつ気まぐれな 性格(そのトリルはマーラーの交響曲第3番のそれを予期しています)、第3楽章の(高貴で 感傷的な)ダンス・・・。終楽章の大フーガは突如ドミナントで歩みを止め、最後には希望を 失った主題が、胸を引き裂くように奏でられます。 43 フィリップ・カサール _ セドリック・ペシャ
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