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35 フィリップ・カサール _ セドリック・ペシャ シューベルトはしかし、そこにある種の暗さと絶望を容赦なく加えている。作品を貫くのはま さに《冬の旅》の雰囲気であるが、それは名高き先輩ベートーヴェンの音楽には見出され なかった特徴だ。それでもシューベルトは、自らの人生のこの段階において、ベートーヴ ェンを模範とした。ベートーヴェンは幾つもの作品で、最小単位のリズムあるいは旋律によ る動機を徹底的に労作しながら、そこに毎回、異なる性格を付与していった。シューベルト のソナタ D959 の始まりを告げる、あの明瞭に区切られた力強いリズムは、それと同様のア プローチなのではないか?先に書かれたソナタ D958 の冒頭のリズムも、より一層ドラマテ ィックであるものの、同じものである。同様の動機はピアニッシモでソナタ D960 の第 2 楽章 「アンダンテ・ソステヌート」の葬送の旋律を伴奏として支え、《 3 つのピアノ曲 D946 》の第 1 曲の主要モチーフとしても顔を表す。全ての源は、その何週間か前に書かれた「アトラス」 (《白鳥の歌》:「ハイネの詩による6つの歌曲」の第 1 曲)の騒然とした左手パートである。

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