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34 フランツ・シューベルト シューベルトが体の不調と闘いながら抱いたこの旺盛な創作意欲は、間違いなく 1827 年 3 月にベートーヴェンがこの世を去ったことに起因している。この出来事こそがシューベル トを、偉大なる先輩の圧倒的な影響から解放した。今回収録したシューベルトの 4 作品で は、彼に対する「感謝」と「敬意」の想いが繰り返し現れる。ソナタ D959 の終楽章の主題 は、自身の 1817 年のソナタ( D537 )の第 2 楽章「アレグレット」からの引用であるが、これはベ ートーヴェンのソナタ 作品 31-1 の終楽章の様式を手本とするものだ。《幻想曲 D940 》のア レグロ・ヴィヴァーチェ楽章のトリオの中間部に現れるカノンの幾つかの音符は、ベートー ヴェンの交響曲第 9 番のスケルツォ楽章のトリオの動機と瓜二つであると、セドリック・ペシ ャが指摘している・・・。ベートーヴェンの交響曲第 3 番「英雄」の第 1 楽章や「熱情」ソナタの 第 1 楽章からの影響が、シューベルトの「人生の嵐」 D947 に指摘できる。さらにこの D947 の 完璧に制御された巨大な構造と力強い律動、音素材を交響的な手法でドラマティックに拡 大していく様が、ブルックナーとマーラーを予期している。《幻想曲 D940 》のラルゴ楽章 の符点のリズムとトリルは、ベートーヴェンのソナタ作品 111 の幕開けを飾るマエストーソを連 想させる。同様に《幻想曲 D940 》終曲の壮大なフーガは、ベートーヴェンの晩年の弦楽 四重奏曲やピアノ・ソナタ 作品 101 、チェロ・ソナタ 作品 102-2 、ピアノ・ソナタ 作品 106 「ハ ンマークラヴィーア」、同 作品 110 、ディアベッリ変奏曲 作品 120 のフーガを参照している。

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