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36 2012 年にドビュッシーの前奏曲集全曲をラ・ドルチェ・ヴォルタで録音されたこともあり、 ショパンの音楽が、どれだけ視野を広げ、コルトーが言うように、音楽における印象派を 予告したかを、強く感じられていることと思います。ドビュッシーを深く扱うことで、ショ パンへのアプローチに変化がありましたか。 3 番や、それ以上に 4 番のバラードには、大胆な和声効果、音色や響きの探求、ペダルの 研究、なめらかな話法、さらには、印象派という言葉を使いたくなるような、ともかく前印象 派と言える、未来に向かった音色のマチエールが見られます。 19 世紀末から 20 世紀初頭 の音楽家がこれらを取り入れたことは明白です。 ショパンへのアプローチが変わったかということですか。さて、どうでしょう。啓発されたとい うことは確かです。コンサートでドビュッシーやラヴェルの曲の後にショパンを弾いた時に、 これを確認できたことがあります。ショパンの現代性は、彼以降の曲に照らされたときに明 らかとなるのです。この録音にあたってショパンのプログラムに没頭しなおした時、いろんな 面が、より強く見えるようになりました。和声、流れるような書法など。 1840 年の聴衆には、な んという新しさだったことでしょう。ドビュッシーが後にやったことと直接つながっているのが わかります。みせびらかしや大げさな表現を嫌っていたということが、ドビュッシーとショパン を結びつけていることは言うまでもありません。ショパンは徐々に和声的な自由を見いだし ていきましたが、それはドビュッシーの作曲のやり方の土台そのものでしたし、ドビュッシー はそれによって音楽語法を解放したのです。それに加えて、色彩、楽器への好み、刺激を 要求されるが決して攻撃的ではない鍵盤との身体的な関係などの、ふたりの作曲家の共 通点を挙げることができます。ドビュッシーが持っていたピアノはショパンのピアノとはかなり 違っていましたが、ふたりとも楽器の可能性を極限まで突き進め、音色を最大限に探求しまし た。 ショパン
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