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35 4 番では最高潮に達したその自由を味わうことができます。 ショパンはここで和声探求をさらに押し進めていますし、またポリフォニーが作品全体にあ ふれています。だからといって伴奏付きメロディを放棄するのではなく、その色彩を大きく ひろげるのです。しかし彼は決してひとを驚かせません。総合的にみると、技巧的、書法的 にショパンがどんなことをしても、その音楽にはなにかを強要したり見せびらかしたりするよ うなものは全くないのです。あらゆるものは常に、詩的な話法のためにあるのです。この面 は、ヘ短調のバラードに如実にあらわれています。 4 番のバラードにはまた、なにか遠くにある性格が見えますね。まるでショパンが世間のしが らみに間を置いているようです。コーダの力強さが、若い時代の勇壮な戦いを思い起こさ せはしますが。ここにはすでに、晩年の覚めた冷静なメランコリーへの、前触れのようなもの が見て取れます。別の次元に旅だって、鏡の向こうに行ってしまって、この土地にはもう触 れないような、そんな印象を受けることもあります。 4 曲のバラードを見ていくと、その書法と、表現されている感情が、おそろしく変化している のがわかります。その変化は短い期間に起こりました。 1 番が完成されてから 4 番が作曲され るまで、 7 年しかたっていないのですから! フィリップ・ビアンコーニ
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