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34 3 番では雰囲気は全く変わります。 もしバラード 4 曲がなにかひとつの曲をつくっていると想像したら―純粋に理知的なことで 全く根拠がありませんが―、 3 番はスケルツォでしょうね。たとえ嵐や暗い部分があったとし ても、この曲は 4 曲のなかでもっとも幸福感にあふれ、精神的に最も軽い曲です。私はこの 曲が大好きです。結局のところショパンには、この曲のように抑えられないような情熱をもっ て終わる、幸福感にあふれた曲はあまりないですね。 書法的な観点で見ると、ここには深い変化が見られます。バラード 4 曲のなかではこの曲は 時には過小評価されることがあるのですが、しかし、転調など信じ難い大胆さに満ちた見 事な和声進行があります。また、ポリフォニーが語法を豊かにしている部分が見え始めます が、バッハ作品をよく研究していたことがわかります。これは完全にショパンの語法の一部と なるのです。バラード第 3 番の最初のフレーズは全く純粋なショパンですが、書法を分析す ると、各声部が鏡像的に対応しており、巧みなポリフォニーになっているのがわかります。 全くすばらしいですね。バッハから学んだことが完璧に自分のものとなっているのです。こ の 3 番からは、言葉が自由になったという印象を受けます。 ショパン

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