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33 フィリップ・ビアンコーニ 2 番のバラードには面食らわせられますね。 これはバラードでも一番謎に包まれた曲ですね。こんなに突然に音楽が止まる。まるで総 合失調症のような形です。ショパンはこの曲をシューマンに献呈しています。シューマンの 精神状態に対応するような曲の内容やトーンと、ショパンがシューマンにもっていたであろ うビジョンに、何らかの関係を見られるかどうかは全く不明ですが。このバラードにはほとん ど病理的な様相があると思っています。作品は長い序奏ではじまりますが、これは、陶酔し たように揺れ、固執概念が反芻される、少々病的な、執拗で風変わりなエピソードです。そ して突然極度に激しい 2 番目のエピソードが襲ってくるのです。ここまで何かをぶつけるの は、ショパンには全くもって意外なことです。それにコーダはものすごく壊滅的で、ト短調の バラードには見られなかった何か絶望的なものありますね。ト短調のコーダは確かに絶望 はありますが、非常に戦闘的で執念深い何かが感じられます。 2 番のバラードのコーダは、 初めから終わりまで苦悩を叫び続け、沈黙の中に、深淵のうちに閉じられるのです。
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