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46 今夜は映画館で イングマール・ベルイマンの映画『叫びとささやき』も、果てしなく残酷な物語です…… 私はどちらかと言えば白黒映画のほうが好きなのですが、それでも、『叫びとささやき』は映 画史上の最高傑作の一つだと思います。……この作品はカラー映画というより、赤白映画 ですけれど! 唯一“カラー”となる公園のシーンでは、空間全体が秋の色調に満ちあふれ ます。この映画では、ベルイマンの元妻でピアニストのケビ・ラレティがショパンの《マズルカ 作品17-4》を弾いています。パウル・バドゥラ=スコダから聞いたのですが、彼とラレティとア ルフレート・ブレンデルは、ともにエトヴィン・フィッシャーのレッスンを受けたそうです。バド ゥラ=スコダいわく、ラレティは素晴らしいピアノの腕の持ち主で、おまけに美女だったそう です。『叫びとささやき』では、このショパンのマズルカも、ピエール・フルニエが弾くバッハの サラバンドも、強迫観念のごとき時を体現しており、それは多くの時計の鐘の音や針の音に よって象徴されてもいます。マズルカの冒頭は、どこからともなく立ち現れてくるような印象 を与えます。この曲には、抑圧された感情——この映画の中心的主題——と、姉妹たちが互 いに寄せる憎しみを託されてもいます。さらに忘れてはならないのは、このドラマを目撃する 女中の密かな恋でしょう。『叫びとささやき』は私をぞっとさせ、圧倒します。
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