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44 今夜は映画館で アラン・キュニーは、『甘い生活』の2年前、1958年公開のルイ・マル監督『恋人たち』で は、ジャンヌ・モローの相手役を演じていますね。 『恋人たち』でキュニーが演じるアンリは、妻が出て行くことを知りながら、ブラームスの弦 楽六重奏曲第1番の変奏曲[第2楽章]に耳を傾けます——二人の関係は修復不可能で す。これほどに若さと男らしさを暗示する音楽が、他にあるでしょうか? これら全ての映画 に共通しているのは、強迫的で容赦ないリズム——すなわち時の流れ——です。アンドレ・ デルヴォーの『ブレーでのランデヴー』も、その例に漏れません。言うなれば、振り子時計が 時を刻んでいます。この映画の原作は、ジュリアン・グラックの短編『コフェテュア王』です。実 を言うと、私はこの短編を読んだ時、グラックの重い文体に驚かされました。映画と文学の 比較は、時に困難を呈します。シナリオは文学ではありませんから……。私は今回とりわけ、 《3つの間奏曲 作品17》を取り上げることに喜びを感じました。私にとって初のブラームス 作品の録音であったからです。『ブレーでのランデヴー』では《3つの間奏曲》が、登場人物た ちや特定の物々と緊密に結びつけられています。このブラームスの音楽が、官能的で、秘密 めいた、曖昧な世界に染みわたっています。それは意識下に属する音楽なのです。ヴィスコン ティの『ルートヴィヒ』で用いられているリヒャルト・ワーグナーの《エレジー》にも、全く同じ ことが言えます。確かに、《エレジー》で繰り広げられるのは別の音世界です。とはいえ《エレ ジー》は、純化された音楽言語——それはブラームスが“我が苦悩の子守唄”と呼んだ彼の 晩年のピアノ作品の中にはっきりとみとめられます——によって、私たちの心をつかみます。 《エレジー》は数十年間、忘れられていましたが、《トリスタンとイゾルデ》を予示する重要な 作品です。私はこの曲を聞くと、バイエルン王ルートヴィヒ2世(ヘルムート・バーガー)の絶 望的な幽閉に直面するエリーザベト(ロミー・シュナイダー)の、節度ある、ゆっくりとした美 しい物腰を思い出します。
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