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41 ジャン=マルク·ルイサダ 具体例を挙げていただけますか? 昔はオーソン・ウェルズの映画が大好きでしたが、今は違います。逆説的に聞こえるかもしれ ませんが、年を重ねるにつれ、“動き”の多い映像に耐えるのが難しくなりつつあります。 つまり今後、小津安二郎の映画にさらに惹かれていくわけですね? その通りです! ロベール・ブレッソン、ジャン=リュック・ゴダール(彼の言動の全てに目を つぶるならば……)、ジャン・グレミヨン、ミシェル・ドヴィル、クロード・シャブロルのような監 督の作品(ドヴィルとシャブロルについては、少なくとも初期作品)に、いっそう惹かれていく はずです。私が現在、その魅力を“再発見”しつつあるフランソワ・トリュフォーとクロード・ソ ーテもここに含まれますが、二人については、全作品が好きなわけではありません。“動き”に 話題を戻しましょう。ブレッソンも小津も、正当な理由がない限りカメラを動かす必要はな いということを、実に見事に証明しています。むろんそれは、完璧な構図ありきの話ですが。 最近、ジャック・ベッケルの『肉体の冠』をまた観ました。10代の頃は理解できなかった作品 ですが、今は深い感動をおぼえます。今まで目を向けてこなかったスタイルの映画にも心動 かされています。たとえば、ジェニファー・ジョーンズが主演したヴィンセント・ミネリ監督の『 ボヴァリー夫人』(1949)のようなハリウッド黄金時代の作品、あとは『深夜の告白』、『サン セット大通り』など……作品名を際限なく挙げることができます。
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