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38 今夜は映画館で 本盤のタイトル“Au cinéma ce soi(r 今夜は映画館で)”は、特定の人物へのオマージュ でしょうか? アルマン・パニジェルArmand Panigelに敬意を表しています。彼は偉大な教養人であり(レ コード批評家たちが討論を繰り広げるフランスのラジオ番組「La Tribune des critiques de disques」の創始者として特に有名)、“映画狂”でもありました。そして少年時代の私 の“映画愛”と強く結びついているのが、パニジェルのテレビ番組シリーズ「Au cinéma ce soir」なのです。このフランス映画を紹介する番組を、私は8歳の時から両親と一緒に観てい ました。ジュリアン・デュヴィヴィエの『望郷』、レイモン・ベルナールの『戦場の墓標(木の十 字架)』、ジャック・ベッケルの『偽れる装い』など、1930年代から1950年代までの名画を観 たことをよく覚えています。さらにパニジェルの「L’Histoire du cinéma français par ceux qui l’ont fai(t フランス映画史とその担い手たち)」という番組は、インタビューとドキュメン タリーによって、さらなる内容の充実がはかられていました。余談ですが、『偽れる装い』の脚 本を手がけたモーリス・オーベルジェ(アンリ・ドコワンの『ベベ・ドンジュの真相』の脚本も 担当)は、私のピアノの師ドゥニズ・リヴィエールの従兄弟なのですよ。しかも『偽れる装い』の 音楽——いちど聞いたら忘れられない素晴らしい音楽です——を手がけたのは、ジャン= ジャック・グリューネンバルトです。

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