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37 ジャン=マルク·ルイサダ まずは挑発的な質問をさせてください:果たして音楽は、映画にとって必要なのでしょう か? 挑発的な答えをお返しします:私の場合、年を重ねるにつれ、“映画は無音でなければなら ない”と考えるようになりつつあります。より正確に言えば、時に映像の力はあまりに強烈で、 音が余計に感じられるのです。これに関して私がよく覚えているのは、シャイヨ宮のシネマテ ーク・フランセーズで観たムルナウの『サンライズ』です。1秒19コマの映像が、いかなる音も 音楽も発さず流れていきました。そのとき1927年のサイレント映画は、純然たるシンフォニ ーと化したのです! いつから映画を深く愛するようになったのですか? 13歳になった年です。ちょうどユーディ・メニューイン音楽学校で学ぶためにイングランドへ 発った年です。あの年に観たルキノ・ヴィスコンティの『ベニスに死す』は、今も私にとって、映 画史上、最も美しい作品でありつづけています。この傑作から大きな影響を受けましたし、お そらく私は、同作を観てプロの音楽家になろうと志しました。そして、ひとは愛ゆえに死ぬこ ともあるし、気が狂うほど映画を愛することもあるのだと悟りました。正直なところ、『ベニス に死す』は奇妙な映画です——ほぼ無声であるにも関わらず、感情の劇的なうねりが描か れます。
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